「朴葉寿司(ほおばずし)」は、岐阜県の飛騨地方などで作られてきた初夏を代表する郷土料理。朴葉の葉がたくさん採れる春の終りから夏にかけて、その葉を使って、昔から田植えや養蚕の飼育など春の農作業を終えたこの時期に、「朴葉寿司」を作って野休みのご馳走としてきた。寿司ご飯に入れる具も家々で異なるが、主にサケ、サバ、キャラブキ、生姜など。殺菌作用があるとも言われる朴葉、その香りを愛でると共に、お皿の代わりともなり葉でまとめながら食べることができる。
清涼な初夏を感じる朴の香りがする逸品
酢じめにした塩さば、塩ますなどが色どりよく並べられた朴葉ずしは、農休みやおひまちに、また、お客のある時に作られる。ご飯があたたかいうちに、葉に包むと香りがよく移るが、葉が変色する。地域によっては、具を混ぜ合わせ、包んだり押しずしにするところもある。具は季節により、好みにより、工夫ひとつでいろいろなんでもよい。
初夏になると、朴の木の葉で包まれた酢飯が登場します。これは田植えなどの休息時に楽しまれる伝統的な料理です。
伝統地域では、家々の庭や周辺には朴の木があり、大きな葉を茂らせています。朴の葉には殺菌作用や防カビ効果があり、「ヒノキチオール」と呼ばれる酵素は抗菌性が高く、特に田植えの時期に酢飯の保存に役立ちます。
朴の葉を使用することで手を汚さずに食べることができ、山仕事や農作業の携帯食として始まり、現代では様々な具材を組み合わせて楽しまれています。最初はシンプルなもので、北陸から入ってくる塩鮭を酢で締め、それを酢飯に載せただけでした。
5月から8月にかけてが朴の葉が美しく香りが良い時期であり、「朴葉ずし」の旬とされ、各家庭で親しまれています。昭和中期まで、岐阜県中濃地域の東白川村では、水稲作業がご近所の協力で行われ、田植えの日に朴葉ずしが昼食に提供されました。
飲食方法も地域によって異なります。東濃地域では、川魚の甘露煮や酢鯖、錦糸卵、紅ショウガなど7~8種の具材を酢飯の上に載せて包む家庭が多い一方、飛騨地域ではさっぱりとした味が好まれ、シンプルにミョウガと酢飯だけのものもあります。
朴葉の包み方も様々で、葉を半分に畳んだり四角く包んだりします。共通しているのは朴の葉を使用することで、作り方や具材は地域や家庭によって異なります。