飛騨紅かぶの特徴
山深く、冬には雪に閉ざされる飛騨地域では、漬物が貴重な食料でした。大根やかぶ、きゅうりやごぼうなどさまざまな野菜が漬物として親しまれていますが、特に雪や霜に強い赤かぶの漬物は現在も各家庭で受け継がれています。
「赤かぶ漬け」に使われる「飛騨紅かぶ」は、大正7年(1918年)に八賀かぶから発見された紅色の突然変異株です。このかぶは柔らかく、糖分と乳酸菌の力が合わさり、ほのかな酸っぱさが感じられる独特の味わいが生まれます。塩が貴重だったため、江戸時代以来の伝統製法で塩を節約して漬けられていました。
赤かぶ漬けの特徴である鮮やかな紅色は皮の色素による自然の色で、発酵が進むと白かった身が赤く染まり、味わいも深くなります。
食習の機会
今ではその光景も少なくなりましたが、高山市、飛騨市を中心とした飛騨地域では11月になると、長い冬に備えて大量の野菜を川で洗う「菜洗い」が行われていました。この光景は地域に冬の訪れを告げる初冬の風物詩とされていました。10~12月上旬に収穫される飛騨紅かぶも、この頃から漬け込みが始まり、寒さの中で熟成し、雪深い冬に欠かせない常備菜となります。
作り方
鮮度の良い飛騨紅かぶをよく洗い、樽に塩水を入れ、その中にかぶを隙間なく並べ入れて、塩を振り、重石をして常温で漬け込みます。2か月ほどで発酵し熟成したら完成ですが、途中で「天地替え」や容器の移し替えを行います。