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穂高岳

(ほたかだけ)

日本第3位の高峰を誇る山々

穂高岳(ほたかだけ)は、中部山岳国立公園の飛驒山脈に位置する標高3,190mの山(奥穂高岳)を主峰とする山々の総称です。日本第3位の高峰であり、日本百名山、新日本百名山、花の百名山に選定されています。これらの山々は穂高連峰とも称され、槍ヶ岳とともに槍・穂高連峰とも呼ばれます。

山の位置と地質

奥穂高岳は北アルプス最高峰で、北に向かって涸沢岳、北穂高岳、前穂高岳、南岳、中岳、大喰岳と山稜が連なり、さらに北に位置する槍ヶ岳も含めて槍・穂高連峰と称されます。前穂高岳以外は主に長野県松本市と岐阜県高山市の境界に位置しています。地質的には柱状節理の発達した穂高安山岩類が、山岳氷河の氷蝕作用を受けた地形であり、峻厳な岩峰が南北に走っています。

これらの山々とは別に奥穂高岳の東方には屏風の頭(標高2,565.4m)、前穂高岳、明神岳と連なる山稜があり、吊尾根と呼ばれる尾根で奥穂高岳につながっています。前穂高岳から屏風の頭までの岩峰にはそれぞれI峰(前穂高岳)からVIII峰、明神岳の南方の岩峰にもそれぞれI峰(明神岳)からV峰の番号が付けられています。

さらに槍ヶ岳から奥穂高岳までの南北の山稜は、奥穂高岳から南西方向に向きを変えて、西穂高岳や西穂高独標に連なっており、これらも穂高安山岩類で構成されています。これより南西側は緩やかな地形の滝谷花崗閃緑岩の分布域で、その延長線上に焼岳が位置しています。

登山ルートと周辺の山麓

山麓へは奥穂高岳より吊り尾根を経て、前穂高岳に至り、カール (圏谷) を下れば、上高地河童橋に至ります。また、岐阜県側に穂高岳山荘から白出沢を下るか、あるいは西穂高岳からロープウェーかその下の道を下れば、新穂高温泉に到達します。

岩場と登山拠点

穂高岳は、剱岳、谷川岳と共に日本三大岩場に数えられます。特に、涸沢岳から南岳の稜線の飛驒側には、谷川岳一の倉沢と並ぶ有数の岩場滝谷があります。滝谷は急峻なだけでなく、崩れやすい岩も多く、岩の墓場と形容されます。また、前穂高岳の東側、奥又白谷の上部も角度の高い岩壁となっています (前穂東壁と呼ばれます)。

穂高岳登山の拠点となる涸沢は、奥穂高岳と前穂高岳に挟まれた吊り尾根よりU字型にえぐられた圏谷で、夏でも雪渓が残ります。

山名の由来

穂高岳は、その形から祭祀用具に例えて、かつては「御幣岳」と呼ばれました。1646年(正保3年)の国絵図で「保高嶽」と記載されていたことから、穂高の名前が使われるようになりました。また、岐阜・桂峯寺所蔵の1690年(元禄3年)円空作十一面観音菩薩立像の裏には「保多迦嶽」との記載があり、1693年(元禄6年)に穂高神社の宮司により「穂高嶽」と記載されました。1909年に槍ヶ岳から穂高岳に初縦走を行った鵜殿正雄の命名がきっかけで現在の名称が広まりました。

地質と火山地形

穂高岳は主に穂高安山岩と呼ばれるデイサイト質の溶結凝灰岩で形成されています。これは約175万年前の噴火でもたらされた火砕流(丹生川火砕流)由来で、この噴火では姶良カルデラの噴火(約3万年前)の約2倍、1914年(大正3年)の桜島噴火の約430倍、雲仙普賢岳の噴火(1991-1995年)の約2800倍のマグマが噴出したとされています。その噴火の後に100万年かけて2000mほど隆起し穂高岳が形成されました。

氷河地形

また、穂高山系には涸沢カールなど、数多くの氷河地形が確認されています。1963年、国土地理院の五百澤智也は空中写真の分析から、従来氷河地形とされて来なかった横尾谷などを古い時代に大規模に形成された氷河地形と認定し、約6万年前の横尾氷期、2万年前の涸沢氷期を提唱しました。

穂高岳にまつわる歴史

1690年(元禄3年)に円空上人が保多迦嶽に登頂したのが記録上の初登頂とされています。1880年(明治13年)にはウィリアム・ゴーランドが上條嘉門次を案内にして明神岳に登頂しました。以降、多くの登山家や測量官が穂高岳の山々に初登頂し、縦走や登攀の歴史を築いてきました。特に1909年(明治42年)8月には鵜殿正雄らのパーティーが奥穂高岳に登頂し、槍ヶ岳への縦走を行いました。

穂高岳の峰々

奥穂高岳(3,190m)は富士山・北岳に次いで日本で3番目の高さを誇り、穂高神社の主祭神「穂高見神」が降臨した場所とされています。
涸沢岳(3,110m)は白出のコル(穂高岳山荘)と北穂高岳の間の峰で、紅葉の時期には多くの登山者が訪れます。
北穂高岳(3,106m)は穂高連峰北端の山で、日本有数の岩場である滝谷があります。
前穂高岳(3,090m)は奥穂高岳と吊り尾根でつながり、北東に伸びる岩場が特徴です。
明神岳(2,931m)は古代から信仰の山で、穂高見命のご神体とされています。
西穂高岳(2,909m)は奥穂高岳より南西に伸びる痩せ尾根の先に位置しますが、特定が難しい山頂です。
間ノ岳(2,909m)は西穂高岳と奥穂高岳の間の稜線に位置し、天狗の頭(2,909m) とも呼ばれます。
焼岳(2,455m)は穂高連峰の南端に位置する活火山で、爆発的な噴火の記録があります。
涸沢は穂高岳の基部に位置し、夏は登山の拠点、秋には紅葉の名所として知られています。

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穂高岳
(ほたかだけ)

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